男なら誰でも一度は宇宙飛行士を夢見たことがあるのではないでしょうか。
一度どころか幼い頃から宇宙が大好きだった僕は、ついに本物の宇宙飛行士とお会いすることができ、ひたすら感動でした。
今回、レクチャーでお会いすることができたのは山崎直子さん。
レクチャー後の懇親会ではお隣に座らせてもらい(!)、懇親会中盤まで食事することも忘れ話を聞かせてもらいました。
向井千秋さんに続き、二人目の日本人女性宇宙飛行士です。2010年にスペースシャトルディスカバリーに搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)へのモデュール取付などのミッションを担われました。スペースシャトルの打ち上げは2011年で中止となったため、日本人で最後のシャトル搭乗者となった方です。
生立ちから宇宙を目指すことになったきっかけ、11年間に及んだ訓練やそこで思ったこと、苦労したこと、今後の宇宙産業の展望、盛りだくさんの1時間半。
いくつか印象に残ったエピソードをピックアップしてみました。
目次
Apollo 13 若いエネルギーが成し遂げたSuccessful Failure
僕が昔からもっとも好きなエピソードを山崎さんがお話されていました。
トム・ハンクス主演の映画であるApollo 13を観たことがある方は多いかと思います。月へと降り立つことを目的として打ち上げられたApollo 13は酸素タンクの爆発という危機を乗り越え、搭乗員全員が無事に地球へと帰還します。Successful Failure(栄光ある失敗)と評されたこのミッションを動かしたチームの平均年齢(地上管制など全てのスタッフを含め)はなんと29歳!今の僕と同じ年です。驚くべきことに、当時、世界で断トツ最先端をいく宇宙プロジェクトは今から考えればとんでもなく若い人たちの手で動かされていたわけです。
いつもプロジェクトをリードする立場として困難に直面するたびに、このエピソードが自分を鼓舞してくれます。
宇宙飛行士の評価クライテリア
1) Self Management
2) Leadership
3) Followership
4) Situational Awareness
この4つにより訓練の内容が評価されていたそうです。ふむ・・・経営者の評価とほぼ一緒ですね。
また訓練の9割が非常時に対するものだとのこと。そこで苦境に立った時の耐久性(Resilience)が試されます。これも組織のトップ層に求められることの一つ。
また興味深かったのは「グループ」と「チーム」との違いについて。
グループは共通の性質が集まったサークル的意味合いがあるのに対し、チームは共通の目的を共有した集団である。後者に特化した組織を作るためには、 1) 目的を共有し 2) 各人の役割をしっかりと意識させ 3) メンバーの状況を把握する ことが重要となる。
ここまで、企業マネジメントの話と一致するとは。最良のマネジメントを目指すことと宇宙飛行士を目指すことが重なりなんだか嬉しくなります。
多様性は不効率を乗り越えて論理的コミュニケーションを生み出す
僕が質問したことは、「極限の状況を経験する宇宙ミッションにおいて、多様な国籍の人材をチームとして編成することは一見するとミスコミュニケーションリスクを増やすことになるが、それをどうメリットへと生かしているか」というもの。
「確かに一時期は非効率が起こります。しかし、それを乗り越えるものは論理性であり、人間としてのコミュニケーションと共にロジカルに人と話す力が鍛えられ、それが最終的により強いチームワークへと帰結すると思います」という回答。
単一民族の暗黙のコミュニケーションで発展してきた日本人に対し、人種のるつぼを基盤として発展してきたアメリカ人の強みはこの当たりに起因するものでしょうか。説得力があります。
民間のサービス部門が支える宇宙産業の成長
宇宙産業は10年以上年平均14%以上の成長を遂げています。その大黒柱を担うのは「衛星サービス」。GPSや宇宙からの映像をベースとしたサービスですね。
世間を賑わせるイーロン・マスクのスペースXやジェフ・ベゾスのブルーオリジンが目立っていますが、小型衛星などを利用し、多くの民間企業が衛星サービスを提供し始めています。
例えば、農業への応用例。「人工衛星の撮影した画像から、茶の甘みを決めるテアニンを生成しやすい性質を持つ「窒素含有率が6%以上で、繊維含有量18%以下」の茶木を抽出。」農業の生産効率を高めた例です。(引用元:宇宙から良質茶園探知 ブランド茶「衛星の恵み」発売 )
日本政策投資銀行が1000億円の融資をアナウンスしたように、世界だけでなく日本における宇宙産業もより民間を巻き込んだ動きへと変化しています。
マンガ『宇宙兄弟』はかなりリアル
本物の宇宙飛行士にぜひ伺いたかった質問。細部までよくリサーチされているそうです。
もう一度読み返したくなってきました。
なんだか初心に帰ったような、大満足の時間を過ごせました。
山崎さんは気取りがなく、成し遂げた偉業を全く思わせない腰の低さ。大学の先輩としても大尊敬です。