Wall Street Prep ー手を動かしながらファイナンスを学ぶ

Wall Street Prep ー手を動かしながらファイナンスを学ぶ

2018-08-27

MBA入学前の準備期間にWall Street Prepというオンラインの授業を取っていました。
以前、こちらの記事でHBXというハーバード・ビジネス・スクールが作ったオンラインコースを紹介しましたが、個人的にはWall Street Prep(以下WSP)の方がオススメでしたのでここで紹介します。(HBXと同様、WSPもファイナンスのバックグラウンドをお持ちの方には不要です。)
Matan Feldmanという元ウォール・ストリートのバンカーが立ち上げたファイナンス教育に特化したオンラインサービスで、大きな特徴はスプレッドシートでのモデル作成を実際に行いながら授業を行うというスタイルにあります。自分で手を動かしながら(もしくは人がモデルしているところを実際に見ながら)講義を聴くため、オンラインのコースにしては理解を深めやすいことが魅力でした。

HBSからは入学後しばらくして、アカウントが配られたため、せっかくならと試しにやってみたのがきっかけです。
僕がやったコースは計12コースあったため、それらについて概要を紹介しようと思います。

講義スタイルの基礎固めコース

1. Accounting Crash Course
会計の基礎固めのためのコースです。内容はとても基礎的なのですが、この時配られる授業用pdfは後々のコースを進める上でとても役に立ちます。ちなみに、全てのコースはGAAP(米国会計基準)をベースに作られていますが、所々IFRS(国際財務報告基準)との差異に関するコメントが入ります。

2. Accounting Crash Course – Advanced Topics
基本的な会計項目に加えて、以下の4つの項目を紹介しています。
– Non-GAAP (Stock-based compensation expanse (SBS) / Amortization expense / Nonrecurring items)
– Deferred Taxes
– Inter-company Investment (Investment in securities / Equity investment / Consolidation)
– Debt Accounting (PIK / Capitalized interest / OID & OIP)

3. Reading & Analyzing Financial Reports
もっとも主要な決算書類である10-Kを中心として、必要な情報が書類のどこに書かれているかを学びます。
他にも 10-Q, 8-K, S-1, S-3, S-4, Form 14A, Form 20-F に関して簡単に触れます。

4. Crash Course in Bonds and Debt
債権や債務に関して細かく説明しています。基本的には数学の世界なのですが、債権の種類が予想以上に多様、かつあまり馴染みのない考え方も登場するため、理解に苦労したコースの一つです。

5. Crash Course in Corporate Finance
NPVやIRRなどの収益指標の紹介から、DCF法を元にして企業価値を評価していきます。(成長率gを一定においたシンプルな事例の扱いのみ、7. DCF Modelingでもう少し精度をあげたモデリングを行います)

Excelで実際にモデリングをしながらのコース

6. Financial Statement Modeling
WSP全体のコアになるコースです。財務三表のモデリング(Historical/Forecast) から最後はSensitivity Analysis Table作成まで行います。Appleを対象として、Excel使いながら+講義を聴きながら+pdfの文書を読みながら進めていくので、頭に入りやすいし分かりやすいです。ここで習う手順が、この後のコースの基礎となります。

7. Discounted Cash Flow (DCF) Modeling
作成した財務三表のモデルを元にDCFモデルを作成し、株価算出を行います。ここでもゴールはSensitivity Analysisとを作成して、前提となる数字の変化が予測する株価にどのような影響を及ぼすかをみます。

8. Trading Comps Modeling
DCFは企業の収益自体から企業価値を算出すのに対し、Compsの手法は他企業との相対的な評価により株価算出を行います。まずは、市場で取引されている株価と企業の収益を結びつける指標(マルチプル)を用いるTrading Compsを使ってモデリングを行います。

9. Transaction Comps Modeling
次は、実際にM&Aなどのディールにおいて、ある会社がどのような価格で取引されているのかを見て企業価値評価を行ってみます。

10. Accretion/Dilution (M&A) Modeling
通常のM&Aを行った場合、合併後の企業のEPSがどのように変化するかをみます。対象は繰り返し話題となっているAppleがDisneyを買収するというケースを対象として扱っています。

11. Leveraged Buyout (LBO) Modeling
最後にLBOを対象としたモデリングを行います。BMC Softwareという会社がBain CapitalとGolden Gate CapitalによってLBOを行った実際のケースを元にモデル作成するため、当時のネットや新聞記事から情報を読み取って分析していく過程を体験できます。

自分の業界に近くて取ったコース

12. Real Estate Modeling
HBSから配られたコースとは別にREITのモデリングコースを取ってみました。海外のホテル開発プロジェクトに身を置いている割にちゃんと不動産開発のファイナンス面を理解していなかったためやってみることに。まだまだ先が長いですが、少しは理解が深まったように思います。

以上の通り、一通りコースを取ってみましたが、頭の中からすり抜けている内容もあり、これからの学びにどのように生かせていくかはまだ謎です。
ケースのディスカッションスピードにはしばらく着いていける気がしませんが、少しでも予習の助けになれば・・・!