IBM WatsonからAIを考えてみる

「実は既にみなさまの生活は人工知能Watsonによる影響を大きく受けているのです」
IBMでWatsonの開発に携わるMasaya Higuchiさんの講演は、このメッセージから始まりました。
HBS Club of JapanというHBSの同窓会により企画されたレクチャー兼勉強会のイベントです。

生活に潜んだAI

2011年に発表されたWatsonは、金融・メディア・旅行・自動車など様々な産業を革新してきました。
AIとはどんな技術であるか?一言で説明するのは難しいですが、

「従来扱いきれなかった大量のデータの中から、意味ある情報を浮かび上がらせる技術」

と言ったところでしょうか。
例えば、ある喘息の患者が地球上のどこで、どのような発作を起こしたか、という情報はそれ単体ではあまり多くの意味を持ちませんが、1億人のデータを分析する技術と重ねた瞬間、発作パターンを予見する貴重な情報となりえます。
Teva Pharmaceuticals and IBM

最近碁の世界においても、AIが人間を超えたと騒がれていますが、これも、AI同士を果てしない回数戦わせ、その対戦結果から有効な戦術を浮かび上がらせる自己学習プロセスによるものです。

とすると、「データの質・量、その集め方」はAIが力を発揮するための非常に重要な要素となります。

講演の終わりに、今年HBSで同級生となる商社出身のNさんから質問が出ました。

「IBMがAmazonやFacebookなどに対してもつアドバンテージは何か?
分析する元のデータが価値であるならば消費者に直接つながるビジネスを持っている方が有利ではないか。」

「IBMの強みはBtoBビジネスに根ざしているところにある。
企業のビジネスや業界に対する深い理解があることで他社にはない強みを発揮できる。」

データをいかに「集めて」どのような切り口で「分析する」か。
現状はAIを開発する企業に応じて、違う分野に強みを持っていますが、軍配が上がる時は一気に勝負がつきそうな予感がします。
メディアやヘルスケアにも進出したAmazon、特に恐ろしい存在です。

AIに代替されないデザイン?

現在はそんな動きとは少し距離を置いている建築業界。
従来の建築デザインは「正解の選択肢」がない中、非生産的なトライアンドエラー・プロセスを踏んでゴールに辿り着いていました。
未だ、このプロセスを根本的に覆すAI技術は誕生していません。
AIが分析をする対象がデータである以上、一対一で数値への置き換えができない要素が多いためでしょうか。

例えば、最も相性が良いと思われる「法規チェック」。
建物が建築基準法やその他法令、条例に適合しているかをチェックする過程は、本来は標準化されているはずでAIに任せても良さそうです。
ただ、当然法律は人間が作ったものであり、そこには解釈の余地が残されている範囲も多いのが事実。
ゆえに個々のプロジェクト判断となる項目が意外と多いのです。

「人間臭さ」があるゆえに最終的に人の判断に委ねるべき仕事と、AIで超効率的に処理させるべき仕事。
将来の建築設計者には、これを判定して設計効率を劇的に向上させる能力が強く求められる気がします。

AI競争で一瞬で軍配が上がってしまうように、この淘汰も一度進むと一気に進みそうです。
そして、その日は近い・・・